2015年08月14日 徒然日記

奈良県神道青年会 第1回勉強会

 

~第60次 春日大社 式年造替 特別公開・参拝~

奈良県神道青年会の研修会が、去る平成27年6月22日、奈良市御蓋山の麓に鎮座まします春日大社で開催された。現在、春日大社では、第60次式年造替(しきねんぞうたい)が行われていることもあり、本来禁足地である御本殿の特別拝観が許されている。私達青年神職にとって、願ってもない見聞を深める絶好の機会として、意義深く研修開催の運びとなった。

 

勉強会2

 

◎社頭説明

 

当日は、春日大社の一木権禰宜さんより、鄭重なご説明をいただいた。
春日大社では、1年を通して延べ2200回以上ものお祭りが奉仕されているそうです。
その中でも至高最上の神事が、20年に1度行われている「式年造替」です。式年とは「定まった一定の年限」、造替とは「社殿を造り替える」という意味で、一般的に神様がお引っ越しされるということを「遷宮」といいますが、春日大社では本殿の位置は変えずに建て替え、あるいは修復する為「造替」というそうだ。
神護景雲二年(768年)御創建以来1200年という永きにわたって連綿と繰り返されてきた式年造替は此度で60回をむかえる。

日本では美しく気高い山々を霊山や霊峰と呼び、登ることで神々の世界に近づくという山岳信仰があります。
御蓋山も古来より春日大社の神々の宿りし山として信仰を集めてきた。
奈良時代、日本国の安泰と国民の平安を祈り、現在の地に神々をお迎え祀り、創建に至ったと伝えられている。

御本殿に祀られている御祭神は、人々の願いをもって、鹿島神宮の武甕槌命、香取神宮の経津主命、枚岡神社の天児屋根命と比売神の4柱の神々が祀られている。この尊い4柱の神々は現在、移殿(うつしどの)と呼ばれる「御仮殿」に祀られている。本殿同様に御神坐が4坐設けられ、御造替完遂まで古式に則り、日々奉仕されている。

 

◎正式参拝

 
神様をより身近に感じられるこの場所で正式参拝を行った。
神霊の依り代である御神体を奉安されている御神坐の外には、六面神鏡と呼ばれる普段見ることの出来ない貴重な神鏡がつり下げられており、御神体に続く大切な物とされ、厳重に守られてきたそうだ。永い歴史の中で、この鏡が落ちた時には災いが起きたと古書の記録がある。
そのような際には宮中より勅使が参向され、随従の楽人により七日七ヶ夜の御神楽が奉納され、国家の平安を祈ったそうだ。
また、移殿は通常内侍殿(ないしでん)と呼ばれる常設の建物。古く御例祭の春日祭の折、京都御所(宮中)より、賢所にお仕えしている女性官職、内侍司(ないしのつかさ)が春日大社に奉仕の為出向かれた折、伺候していた場所であることからそう名付けられたそうだ。そこから御本殿へと続く階段は、通常よりゆるやかな傾斜に造られており、これは内侍司のお召しになっている装束で歩きやすいよう配慮がなされていると言われている。

 

◎140年の時を経て後殿の特別参拝
「神秘の磐座」初公開

 
此度の式年造替を記念して、明治維新以来、初めて御本殿の後方に位置する、後殿「うしろどの」が特別に公開され、私達も御案内いただいた。
後方から御本殿を拝観すると、第一殿から第四殿の裏にそれぞれに木が植えられており、第一殿には「榊」、第二殿と第三殿には「木斛」、第四殿には、比売神であることから、女性らしい「姫山茶花」が植えられている。さらに第一殿と第二殿の間には、白い漆喰で塗り籠められた磐座があり、このことは春日大社の古文書にもいっさい記されていないとのこと。正に神秘の磐座である。

 

~自然を畏怖し共存する心~

 

詳しい説明を聞くうちに、それぞれに意味があると感じた私は、ふと境内を見渡せば、樹齢1000年の大杉、その根本から斜めに伸びたイブキが直会殿の屋根に穴をあけて伸びている事に気づく。まるで木を生かすように配慮されているようだ。また、御本殿を取り巻く廻廊は、決して歩きやすい平坦な造りをしておらず、勾配があちらこちらで見ることができる。説明によれば、神様が宿る御蓋山の神聖性をとどめ、決して汚さぬように、極力山を削らずに社殿を建てられた経緯があり、現在も受け継がれていること。自然を守り共存する心が伝わってくる。
この話を聞いて、私は、如何に神々を迎えるということを厳粛に受け止めて、祀りと向き合って実践してきたのか、伝統と日本の祭りの心に胸を打たれ、継承していく意味を改めて考えさせられた。
いつでも新しく決して変わらないもの~
継承の意味を知る。
なぜ20年ごとにお社を造り替えるのか。これは、神道特有の「永遠」の考え方に支えられているからであろう。西洋の神殿は、今あるものが永遠に残ることを求め頑丈に造られています。日本に於いても奈良市の法隆寺は1400年も前に建てられており、春日大社に於いても、同じく永遠に残る物を造ることは創建当時の技術で可能だったはずだ。それでも春日大社は20年毎にお社を造り替えることで、いつでも新しく、いつまでも変わらないもの、つまり「永遠」を目指してきたのではないでしょうか。その根底には、日本人の常に新しい命を映え輝かせたいと願う蘇りの信仰がみえます。神様のお住まいは常に新しくきれいにしておかなければならない。20年という歳月では世の中の環境は変わってしまうでしょう。その中でも、先人の思いを大切にしながら、その時代に合った最高のものを新しく造ってきたのだ。
現代社会においても同じ事が言えるのではないか。私達の社会は、日々目まぐるしく進歩している。そんな中、忘れられがちな祖先を敬い大切にするという、本来の美しい日本人の心を未来の子供達に伝えていく(甦らせていく)ことが、私達の使命であろうと思う。
今後も会員皆思いを一つに邁進していきたい。心に残る研修でした。
春日大社様有り難うございました。

 

勉強会3